7-21.難問・珍問進化の痕跡器官?胸腺[4]体の防御機構・免疫
しかし神は、劣ったところをことさらに尊んで、からだをこのように調和させてくださったのです。それは、からだの中に分裂がなく、各部分が互いにいたわり合うためです。もし一つの部分が苦しめば、すべての部分がともに苦しみ、もし一つの部分が尊ばれれば、すべての部分がともに喜ぶのです。(Ⅰコリント12: 24-26)
体を防御する最前線は、外界から隔てる皮膚と消化管・気管などの粘膜ですが、体内の防御機構はリンパ球の存在する部位で働いています。
そして、リンパ球は胸腺で成熟することを前回までに学びました。さらに、動く臓器である血液中の血球成分や可溶性タンパク質である免疫グロブリンが関与する免疫機能などについては、この「聖書と科学」のメッセージ・シリーズで一度学びました(六日間(144時間)の天地創造 (30)血液中の血球成分及び (31)いのちの血液)。
指紋が各個人で全く異なっていることは、今や誰でも知っていますが、実は、人間を作り上げている約60兆個の細胞のすべてに、本人である印が付けられています。外部からの侵入物、自己の特性と異なるものは原則的には容認しないのです。自己を美しく維持するための防御機構・免疫反応が高度に構築されているのです。

この重要な任務は、造血幹細胞に由来する白血球が担当しています(写真の円盤状をしているのが赤血球、金平糖のようなつぶつぶのあるのが白血球です)。白血球は言わば全身をくまなく巡回する警備員であり、危険を見つけるとその信号を伝達します。
専門の役割を分担しているそれぞれの細胞は、受け取った情報を処理し、記憶して、様々な反応へと拡がっていって自己防衛機構である免疫反応として完結します。
白血球には様々な種類がありますが、大きさは7~25μmで、正常血液1mm3あたり平均約7,000個です。白血球の機能が自己防衛反応であるので、白血球数が減少すると体の抵抗力が弱り、また、感染を起こすと戦いのために白血球数は逆に異常に増加するのです。
怪我などをした後に傷口から出る膿は、集まってきた白血球が傷の修復のために働いて戦死した死骸なのです。この細胞の担っているこのような機能のために、白血球の寿命は非常に短いのです。
殺菌作用を持つ顆粒球は3種類あり、白血球の60%を占め、寿命は血液中では4~8時間、組織中でも4~5日に過ぎません。単球は白血球の3~8%で、細菌などの異物を細胞内に取り込み、細胞内酵素を使って消化してしまいます。
また、この異物の性質をT細胞に伝達して、防御部隊に総動員をかける役割を果たします。寿命は血液中では10~20時間、組織中では数か月~数年です。
リンパ球は白血球の約25%、寿命は100~300日ですが、免疫反応において多彩な機能を果たす各種の細胞があります。
ナチュラルキラー細胞(殺戮者細胞)は常時待機していて、体内で生じた異物、例えばがん細胞などを殺して、体を守る常置の防衛部隊の役割を果たします。
一方、千差万別の異物に個別に対応して戦うための武器である抗体、免疫グロブリンを合成する機能を持っている専門細胞はB細胞(Bリンパ球)で、受けた指令通りに抗体を産生します。ワクチン注射をして免役するのは、その病原菌の性質を免疫細胞に記憶させることであり、後から本物の病原菌が来たときにすばやく対応して抗体を合成することが出来るように準備しているのです。
18世紀末、エドワード・ジェンナーによって開発されたワクチン療法は、死の病であった天然痘を皮切りに、結核、コレラなど、数多くの恐ろしい感染症を予防し、又治療できるようになりました。
胸腺でつくられるT細胞(Tリンパ球)は、アレルギー反応や移植片拒絶反応などに関わっており、「非自己」の識別に最も重要な役割を果たしています。近年、免疫制御を専門とするT細胞の存在が明らかとなり、2種類のT細胞が発見されています。
免疫制御T細胞の機能は、臓器移植の生着維持、がんの発症抑制、アレルギー制御のほか、自己免疫疾患の発症制御などとの関与も明らかにされており、これまで未解決であった免疫に深い関わりのある難病の解決への寄与にも期待されています。
免疫機構はまだ全貌の一端が解明されたに過ぎないと思われますが、それでも細胞レベルや分子レベルで理解できるようになり、その複雑で精巧な機構には驚嘆するばかりです。
参考文献: “Concise Medical Immunology”, T. Doan. R. Melvold, & C. Waltenbauch; 「好きになる免疫学」、多田富雄、萩原清文; 「絵で分かる免疫」、安保 徹; 「免疫学の最近の動向 ライフサイエンス・医療ユニット」 庄司真理子、茂木 伸一; 「複雑系特集論文 免疫的自己・非自己認識システムによる自己複雑化処理」、米澤保雄,長野 忍 ,岩崎唯史



