7-22.難問・珍問進化の痕跡器官?親知らず[1]序論
ついで神は、「地は、その種類にしたがって、生き物、家畜や、はうもの、その種類にしたがって野の獣を生ぜよ。」と仰せられた。するとそのようになった。神は、その種類にしたがって野の獣、その種類にしたがって家畜、その種類にしたがって地のすべてのはうものを造られた。神は見て、それをよしとされた。(創世記1:24-25)
進化論については、昨今、様々に異なったメカニズムが提唱されており、詳細については各種各様で一見全く異なった理論にも思えます。
しかし、その論理の基本は、「知的創造主の存在を否定していること、生命の始まりは偶然に一つの細胞から始まったこと、それが何十億年という悠久の時間の中で、高度の生物学的遺伝情報が次々と付け加わり、下等なものから高等なものへと進化し継承されてきて、無数とも思える種類の生物が存在するようになったと考えていること」であり、いずれも大差はありません。
そして、この「進化仮説」を証明するために、痕跡器官という一つの仮説が提唱されたのです。
かつては役に立っていた各種臓器が、進化の過程で本来の機能を果たさなくなり、現存する動物の体内に進化の痕跡のみが残っているのだと考えたのです。
これら「痕跡器官」は、その生物の役に立っていないので存在する理由は見つからず、進化の前の段階において必要だったと考える以外には説明が難しいという論理です。
それは当然、生物の形態が変化したということであり、進化が実際に起こったことの証拠であり得ると主張しているのです。注目すべきことは、仮説でもって仮説を証明しようとする仮説の連鎖であることです。
痕跡器官とされている臓器の中、間違って盲腸と呼ばれた虫垂と喉の奥の扁桃、そして免疫器官として極めて重要な胸腺を前項までの9回にわたって取り上げて、その概要を学びました。
この三つの臓器は、問題が起こるまで存在に気が付かないこと、いずれも重要な機能を担っていて痕跡器官の定義には当てはまらないこと、そしてその中心的な役割は免疫機能であることなどが共通しています。
人類の無知に根ざしてこれら三臓器が無用だと決めつけていたのに、免疫学の発展に伴って修正されたことを学びました。
今回は、誰でもその存在については知っていて、粗雑な扱いをすることの多い「親知らず」を取り上げてみたいと思います。
歯や口中の健康状態が体全体の健康状態に重大な影響を及ぼすことが明らかになって、80歳になるまで歯を20本維持しましょうという「8020」運動が1981年に提唱されました*。
個人的な世界観・人生観には関係なく、歯茎や歯一本、一本に至るまで、頂いた生来のものが重要であり最善であるという認識が高まってきているようです。
人間の歯は、乳歯は20本、永久歯は28本プラス「親知らず」が4本で、合計32本あります。乳歯はどうせ生え替わるから虫歯になっても構わない、「親知らず」はいろいろと面倒を起こすから抜いてしまえ、歯科技術が進んで何でも噛める良い入れ歯が作れるようになったから入れ歯で良いのだなどと、三~四十年前に飛び交った暴言は今やすっかり影をひそめたようです。
「親知らず」とは一番奥の大臼歯、正式には下顎第三大臼歯2本、および上顎第三大臼歯2本の計4本のことで、成人近くの年齢になって生えることが多く、歯の生え始めを親が知ることは余り無いというのが名前の由来です。
英語では知恵の歯と呼ばれますが、これは物事の分別がつく年頃になってから生えてくる歯であることに由来します。ところがこれは人だけがもつ特徴で、一般に霊長類では、サルでさえも、いちばん最後に生えるのは、大臼歯ではなく犬歯なのです。
この親知らずの第三大臼歯が、邪魔もの扱いをされるようになったきっかけを検討してみましょう。①他の永久歯より遅れて生えること、②すでに28本整然と生えていて、一番奥に新たな歯が生えるための充分な場所が用意されていない場合があること、③人によっては、4本全部は生えないで、3本だったり2本だったり、一生、歯が外へは出なかったり、あるいは先天的に存在しない場合もあること、④先に生えていた歯を押しのけて歯並びを悪くしたり、斜めに生えたりして、磨き残しを発生させやすく虫歯を誘発したりし、問題が多い、などの理由でしょう。
進化論では、「親知らず」をどのような視点から痕跡器官であると説明しているのか、簡単にご紹介しましょう。
「人類が、その昔『猿人』だった頃、猿人たちの顎は現代人の顎より大きく、歯は全部で32本だった。猿人から人への進化の過程で、顎は小さくなって(退化)、収容できる歯の本数は28本程度になってしまった。現代人は猿人から進化している過程にあり、顎が先に小さくなったのに歯の数はまだ減っておらず、ちぐはぐである。
成長が不十分な顎に親知らずが生えると収容しきれないので、結果として様々な問題を生じる場合がある。
現在、親知らずが全部は生えない人もいることは、人の進化における歯の退化傾向の中で、少なくとも痕跡器官化しつつあると言えるだろう。
そして、数万年後の将来、第三大臼歯は全く生えなくなり、人類は28本の歯を持つ高等霊長類となる可能性を秘めている」、などです。
次回以降に、動物の歯や、人類の歯の歴史的変遷などを調べて、親知らずは本当に進化の過程にある役に立たない痕跡器官なのか、失われつつあるのかどうかを検証したいと思います。
*「8020(ハチマルニイマル)運動」:1981年 WHO(世界保健機関)とFDI(世界歯科医師会)が紀元2000年に、「65才以上の無歯顎者を減少させる」という目標を立てたのが運動の始まり。「8020推進財団」が、2000年に設立されました。
参考資料:”Vestigial Organs” Are Fully Functional, J.Bergman, & G.Howe, Creation Research Society, Monograph Series: No.4 (1990); “Setting the Record Straight on Vestigial Organs”, D.A.DeWitt, https://answersingenesis.org/answers/magazine/v3-n2/ (2008); “Do any vestigial organs exist in humans?”, J.Bergman, TJ Archives, vol.14; https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%97%95%E8%B7%A1%E5%99%A8%E5%AE%98_(%E7%94%9F%E7%89%A9) (痕跡器官);
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%AA%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9A (親知らず)
https://www2s.biglobe.ne.jp/~shunsei/homo.htm#jin (人類の歯・松本歯科医院)
(歯の人類学・日本大学松戸歯学部)
https://ymd20hiro4.sakura.ne.jp/sub4_1.html (歯の時代変化・山田歯科クリニック)



