3-2.血液と海水の無機成分濃度(2)

第3章 血液と海水

3-2.血液と海水の無機成分濃度(2)

神はまた、彼らを祝福し、このように神は彼らに仰せられた。「生めよ。ふえよ。地を満たせ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地をはうすべての生き物を支配せよ。」ついで神は仰せられた。「見よ。わたしは、全地の上にあって、種を持つすべての草と、種を持って実を結ぶすべての木をあなたがたに与えた。それがあなたがたの食物となる。」(創世記1:28,29)

 現在の海には、平均約3.5%の塩分が含まれており、そして陸地の塩分が河川によって絶えず海に流れ込んでいますから、海水は少しずつ濃くなり続けています。今まで同じ速度で塩分が流れ込んできたとすると、現在のナトリウム濃度に達するのに、6,200万年しかかかりません(進化論の『現在は過去解明の鍵である』という考えによって概算されています)。他の微量ミネラルについて計算した場合、更に短期間しかかからないことになります。進化論によると、3億5千万年以上前に両生類が海から陸に上がったとされており、その時には海水は塩分を全く含んでいなかったはず、ということになります。したがって、海から陸に上がる時に、その生息環境の海の水を体液として持って来たという仮説は、根底から成立しません。また、最初の海にすでに現在の3分の1位の塩分が含まれていたとも言われており、それによって算出すれば、海ができてからの年数は、更に大幅に短期間になることは明らかです。

さて、進化論者によって海の水に由来していると思われた生物の体液は、各電解質の濃度が海水と異なるだけではありません。種々の重要な機能を効果的に行うために、いかに見事な総括的デザインにより造られ、維持されているかについて、少しお話ししたいと思います。体液には細胞内液と細胞外液があり、体液量は成人では体重の約60%を占めており、細胞外液には血漿とリンパ液、組織間液があります。体液の溶媒は水であり、各種の電解質(塩)や非電解質小分子(ブドウ糖など)が溶け込んだ結果、タンパク質など高分子物質の溶解度が大きくなって溶けることができるようになり、酵素反応・免疫反応など大切な生命反応の場を提供しているのです。更に大切なことは、数多くの微量電解質は、これら重要な反応に直接・間接的に関与しているのです。また、血液は酸素と炭酸ガスのガス交換のための運搬をし、様々な栄養分を運び、老廃物を運び去るなど重要な働きの場を整えるために、電解質は大きな役割を果たしています。したがって、体液中の諸成分濃度、特に各電解質濃度は、厳密にある一定の範囲内に維持される必要があり、その範囲を逸脱すると、様々な生命反応が大きく乱れるのです。

近年、人々の健康意識が高まり、ヘモグロビン量が、コレステロールが、血糖値がと、話題に上ることが多いようです。しかし、血漿電解質、つまり様々な塩類の濃度が一般の人々の話題になることは、ほとんどありません。通常の健康診断では、血漿電解質濃度は測定されません。薬を注射する時、特に大量を点滴する時、塩濃度が厳密に調整された「生理食塩水」に薬物を溶かして投与されることはご存じでしょう。もし、ただの蒸留水に溶かしたり、逆に海水のような濃い塩溶液に溶かして注射したら、命に関わるほどの大事に至りかねないこともご存じでしょう。コレラなどでひどい下痢症状を呈した時、脱水症状を起こして体液の電解質濃度調節が利かなくなると、重篤な症状を呈します。

人間にそして動物にも、創造主はいのちを与え、食物を与え、「生めよ。ふえよ。地を満たせ。」と言って、健康で、実は当初は不老・不死のいのちを創造なさったのです。私たちの身体は健康な状態を維持出来るように、容量の大きい精巧な調節機能「ホメオスタシス」が備えられています。人間の堕落により地球環境が変わり、死が入った後も、ホメオスタシス機能はまだかなり働いていますから、生きている限り相当の変動を回復させる能力があります。現在、生活習慣病と呼ばれるようになった様々な疾病は、昔は老人のホメオスタシス機能の衰えが大きい病因でした。昨今、生活習慣の乱れが一因となり老化の若年化をもたらし、生活習慣病は壮年期から若年層にまで広がっています。

さて、異常を起こすと重篤な症状を引き起こす電解質濃度に関しては、他の成分より大きなホメオスタシス機能が備えられているようです。水を多少大量に飲んでも、塩分を大量に摂取しても、最初に異常が観察されるのは血清電解質濃度ではありません。細胞一つ一つに余分なナトリウムを排除するなど、精巧なメカニズムが組み込まれていて、余分な塩分や水分は速やかに体外に排泄される仕組みがあるのです。海水から持ち込まれた量的にも質的にも意味を為さない体液ではなく、全く独自のデザインにより創造され、維持されている生命体全体の機能なのです。

参考文献:「内科学」(朝倉書店)、「生命進化/40億年の風景」(化学同人)、「創造科学研究会季刊誌」(Vol.2, No2)、「地球と宇宙の雑学事典」(日本実業出版社刊)