3-1.血液と海水の無機成分濃度(1)

第3章 血液と海水

3-1.血液と海水の無機成分濃度(1)

あなたは、深い水を衣のようにして、地をおおわれました。水は、山々の上にとどまっていました。水は、あなたに叱られて逃げ、あなたの雷の声で急ぎ去りました。山は上がり、谷は沈みました。あなたが定めたその場所へと。あなたは境を定め、水がそれを越えないようにされました。水が再び地をおおうことのないようにされました。(詩篇104篇6-9)

 今でも進化論者はときおり、「私たちの血液の無機成分は、海水の無機成分と非常によく似ている。これは現在陸上に棲んでいる動物が、5億年前ともいわれる時期に海から陸へあがった一つの証拠である。海に棲んでいた昔々の私たちの祖先は、海水の化学成分を細胞を満たす液体として受け継いだ。後に、これが血液となった」と主張します。しかし、この「血液の無機成分は、海水の無機成分と非常によく似ている」という主張は、事実に反します。
分析技術の進歩により、今では海水についても、血液(血漿)についても、多量に存在する元素はもとよりのこと、微量元素についても詳細に調べられています(多くの微量元素が生体にとって、極めて重要であることも判明してきています)。

食塩を構成する元素である塩素及びナトリウムは、血漿中にも海水中にも高濃度に存在しますが、海水中の濃度の方が遙かに高く(ナトリウムの実際の濃度を表の下に記載し、表には相対値で示しました)、血漿中濃度は海水中濃度の約20~30%に過ぎません。また、カルシウムは海水の約10%、マグネシウムは僅か2%に過ぎません。一方、鉄は、酸素を運ぶヘモグロビンを構成する重要な元素ですが、血漿中には海水中濃度の300倍以上存在し、亜鉛、リン、クロムも、海水の100~500倍も高濃度に含まれています。

さらに、注目されるのはセレンですが、血漿中でも微量元素であるために研究が遅れていましたが、人体にとって重要な機能を持っている元素であることが近年明らかになってきました。そして血漿中には、海水中濃度(0.00009 mg/㍑)の実に1万倍の高濃度(0.9 mg/㍑)に含まれています。血漿及び海水中の各元素濃度とセレン濃度に対する比率を表に示しています。これら元素の相対的な割合が、血漿と海水とで著しく異なっていることをさらに明確に見ることができます。血漿では、セレン、銅、鉄、亜鉛、クロムなど重要な微量元素がほとんど同濃度(比率が1~1.2)であるのに対し、海水にはこれら元素はセレンの20~256倍と高濃度に含まれています。さらに、マグネシウムは血漿ではセレンの30倍に過ぎませんが、海水では実に1千万倍(1.4 x 107)で非常に大きく異なっています。カルシウム、カリウム、ナトリウム、そして塩素についても同様の傾向(1万~10万倍の差)があります。このように、「血漿中の無機成分と海水中の無機成分が似ている」という主張が誤りであることは明白です。

さて、水に棲む魚の体液はどうなっているでしょうか?海の水と似た成分なのでしょうか?実はそうではありません。海水は塩辛くても、鮪の刺身を塩辛いと感じる人はいないことから、誰でも体験的に知っていることでしょう。海の魚は3.5%の塩水を口から飲み、0.7%まで減塩して細胞内液にしているのです。逆に、淡水魚の体液が無機成分をあまり含まないで、水で「ぶよぶよ」の状態になることはありません。魚には浸透圧調節という機能が備えられていて、海の魚も淡水魚も体液をそれぞれ一定に維持する機能を持っているのです。浸透圧調節はエラ、腎臓、膀胱、腸などの器官、エラの特殊な細胞や、制御するホルモン等によって行われます。このことからも、陸生動物の血液成分が海水成分と似ているかどうかという議論は、海から陸に上がったという進化論とは無関係であることは明らかです。天地創造の時、海がどのような塩分を含んで作られたのかは分かりません。しかし、その後、ノアの洪水は全地球を覆いました。この時と、洪水後の大きな変動・侵食の時代には大量の塩分が海水に加えられた可能性は大きいと考えられます。海水の塩分の変遷について、そして血漿中塩分の働きなどを次回少し考えてみたいと思います。


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元素セレン血漿海水との比血漿/海水
セレン1110,000
1.125643
1.133333
亜鉛1.2122100
クロム1.222550
マグネシウム301.4 × 1072.1%
リン401.0 × 103400
カルシウム564.6 × 10612%
カリウム2224.4 × 10651%
ナトリウム3.6 × 1031.2 × 10830%
塩素4.1 × 1032.1 × 10819%

血漿中及び海水中元素の比較

海水:セレン0.00009 mg/㍑、ナトリウム10,700 mg/㍑
血漿:鉄0.08-0.17 mg/㍑ ナトリウム310-340 mg/㍑


参考文献:「生化学ガイドブック」(南江堂)、「内科学」(朝倉書店)、「生命進化/40億年の風景」(化学同人)、「創造科学研究会季刊誌」(Vol.2, No2)、Encyclopaedia Britannica 、「地球と宇宙の雑学事典」(日本実業出版社刊)