4-3.馬の話:歯の形と食べ物の関係

第4章 馬の話

4-3.馬の話:歯の形と食べ物の関係

神がこれ(ダチョウ)に知恵を忘れさせ、悟りをこれに授けなかったからだ。それが高くとびはねるとき、馬とその乗り手をあざ笑う。あなたが馬に力を与えるのか。その首にたてがみをつけるのか。あなたは、これをいなごのように、とびはねさせることができるか。そのいかめしいいななきは恐ろしい。(ヨブ記39:17-20)

 中学・高校の教科書、一般向け教養図書やテレビの番組などで教えられ続けているのは、単純な、一定方向への馬の進化(定向進化)です。体の大きさ、蹄の指の数についてはすでにお話ししましたが、歯に関しても同様に、絶えず一定方向に進化したとして、概ね次のように説明されています。

「エクウスに至る進化の過程に出現したヒラコテリウム、メソヒップスなどの頬の歯は、小さくて短く、歯冠(歯の口腔内に表れている部分。表面は硬いエナメル質で覆われている)が低く、セメント質がなく、襞は浅く単純で、軟らかい木の芽や木の葉を食べていた。このような歯は弱く、すぐ磨り減ってしまうので、研磨力を持つ珪酸が含まれ、ざらざらして固い草や種子を食物にすることは出来なかった。パラヒップス及びメリキップスへと進化するにしたがって歯も臼歯(人では奥歯。磨り潰すための歯)に変化し、セメント質が生じ、歯冠が高くなり、表面が複雑なでこぼこ状になり草を磨り潰す機能を獲得して、ついに草食動物となった。」

ところが、今や、多くの進化論者は、「馬の進化は定向進化の典型だと考えてきたのは重大な誤りであった」と考えており、「その誤りの一部は不適当な証拠により、又その大部分は皮相且つ間違った研究方法によってもたらされたもの」(G.G.シンプソン)だとも指摘されています。体が絶えず大きくなったのではなく、長期間にわたり変化しなかったり、進化の支流では小さくなったりしたと認めています。足の指の数や歯について、その他、馬科の歴史で起きたあらゆる変化について、研究が進み情報が多くなるにしたがって、一定方向に向かって進化したとする理論に対する反証が、あまりにも数多く発見されているからです。
しかしながら、多くの進化研究者は「生物は進化した」という仮説を不動のものとして、つまり「進化は事実であり、結論である」という信念に立脚して、より複雑な様々な進化理論を提唱し続けているのが現状のようです。

さて、歯の形から食べ物を推測することが出来るのでしょうか?進化論に立つ古生物学者が、歯冠が高いので草を食べていたとされていた500万年前の6つのウマの「種」について調べました。安定同位元素(放射能を持たない同位元素)である12Cと13Cが歯に浸み込んでいる量を測定した結果、歯冠の高い馬が木の芽や葉を食べていたことが証明されました。こうして、ウマの歯の形から食性を推測することは誤りであることが明らかになりました。又、現在生存している別の種類の動物、コウモリの歯と食性の関係についての研究では、昆虫、小型哺乳類、魚、血液、果実、そして花粉と蜜を食べる6グループを調べた結果、歯の形から食物を推測できないことが明らかになっています。

進化論では、情報量の限られた単細胞生物から、順次、多くの新しい遺伝情報が付け加わって遂にヒトにまでなると考えています。例えばウマの歯の歯冠の変化だけを考えても、歯冠が少しずつ高くなるその一段一段に恐らく遺伝情報の追加があり、大きさに関しても、形の複雑さに関しても、それぞれ一段又一段と遺伝情報の追加があったと考えます。歯に関してだけでも、歯冠以外の様々な性質について、個別に遺伝情報の追加があったと考えるのです。

聖書的創造論によると、最初にあらゆる種類の生物が、多くの遺伝情報を持って創造されたと考えます。たとえ形質として発現していなくても遺伝情報が潜在していて、ある場合は選択され、ある場合は消滅してそれぞれの種類の中で多種多様な変異を遂げたと考えます。またある生物は環境に適合しないなど、何らかの理由で絶滅しました。又、ある遺伝情報は備わっていても制御機構によって発現しなかったり、生息条件によっては発現したりもするでしょう。

遺伝学の進歩により、遺伝暗号のスイッチを入れたり切ったりする様々な制御機構が、遺伝子として生物に組み込まれていることが明らかになってきています。歯についても、ネズミの臼歯が生えないようにするタンパク質があり、このタンパク質によって代わりに門歯(人では前歯。噛み切る働き)が生えることが発見されました。このタンパク質が働かないと、門歯は生えないのです。
生命体は不思議に満ち満ちており、科学の発展によりこの不思議を少しずつ学んで、間違った情報は訂正され、正しい情報を得て、正しく理解するようになることを願っています。

脚注:自然界に存在する炭素原子の大部分は原子量が12の12Cですが、化学的性質が同じで、原子核の質量(原子量)だけが異なる元素を同位元素と言い、安定同位元素である原子量13の13Cが少量存在しています。化石の年代測定などに使われたりしてよく知られている原子量14の14Cは、放射性同位元素です。


参考文献:「創造」Vol.3, No.4(1999);「馬と進化」(G.G.シンプソン/どうぶつ社);今泉忠明監修(1995)「進化論に疑問あり」(リチャード・ミルトン著);チャート式「新生物ⅠB・Ⅱ」(小林 弘著/数研出版)(2002)