4-4.馬の話:腓骨、進化の残りかす?

第4章 馬の話

4-4.馬の話:腓骨、進化の残りかす?

シオンの娘よ。大いに喜べ。エルサレムの娘よ。喜び叫べ。見よ。あなたの王があなたのところに来られる。この方は正しい方で、救いを賜わり、柔和で、ろばに乗られる。それも、雌ろばの子の子ろばに。(ゼカリヤ書9:9) そこで、ろばの子をイエスのところへ引いて行って、自分たちの上着をその上に掛けた。イエスはそれに乗られた。(マルコの福音書11:7)

 ロバの子に乗って、イエス・キリストのエルサレムへの入城は、その数百年前(紀元前6世紀)にゼカリヤによって預言されていました。このように、エクウス属のロバも、人を乗せ、荷物を運んで人々の生活と密着して生きてきました。そして、その後、エクウス属は進化の証拠として系統図が描かれ、典型的な進化の過程を示すものとして使われ続けてきました。

前回までに、ウマの大きさ、脚、蹄の指の数、歯の形などについて説明しました。軽快に速く走る馬の脚は特別な構造に造られていますが、腓骨(脛骨と共に下腿骨を成す細長い骨)は、進化の過程で退化して役に立たなくなった痕跡器官だと、進化論者によって主張されました。

しかし、様々な動物において、かって進化の痕跡器官と見られた多くの器官が、科学の進歩によって重要な役割を持っていることが判ってきています。馬が駆ける時には大きな重量が脚にかかりますが、腓骨が脚と足の骨を補強する役割を果たし、重要な筋肉も付いています。さらに、滑らかに歩くために不可欠な軟骨の入る窪みが、腓骨の間に備えられています。

さて、ウマの進化過程に出現し数千万年前に生きていたとされている、様々な動物の化石の年代測定法について、簡単に触れておきたいと思います。かって生きていた証拠として発掘される化石の年代測定には、放射性同位元素の原子の崩壊が利用されます。生物は生きている時は、天然に存在する放射性同位元素をその存在比率で外界から摂取します。死後は、放射性同位元素は新たに体内に摂取されず、組織中の放射性同位元素は崩壊する一方ですから、減少していきます。

例えば原子量14の14Cはごく微量(12Cの1/1012の割合で含まれる)天然に含まれ、5,730年を半減期(半分に減少する時間)として14N(普通の窒素原子)になって減少していきます。そして、化石中に残存する14Cの比率を測定すると、その生物が死後どれ位経過しているか、つまり化石の年代が推定されるというのが全体的な原理です。化石年代測定に使われる放射性同位元素には、このほか原子量40のカリウム(40K)や原子量238のウラン(238U)などもあります。なお放射性同位元素による年代測定法は、斉一説(天変地異など急激な変化はいっさい起こっておらず、この地球上のすべての事象は常に同じ状況で推移してきたという仮定)に基づいており、昔も今も放射性同位元素の存在比率は変わっていないという大きな仮定を置いています。

「放射性同位元素による年代測定法で、何百万年、何千万年前の生物の化石であると判定された」というと、科学的で間違いないものとして受けとめられます。ところが、前述の仮定があるということのみならず、放射性同位元素による年代測定自体が絶対的なものではなく、相対的な測定法なのです。地層は年代と共に積み重なって出来たと進化論では考えていますから、深い地層ほど古い年代のものであったと考えます。特定の化石(示準化石)が含まれている地層が、白亜紀、ジュラ紀からカンブリア紀などと呼ばれている地質年代、すなわち百万年単位で刻まれている地質年代表のどの年代であるかが、まず決定されています。これを基準として、新たに発見された化石が含まれていた地層の年代が判定され、その結果がその化石の年代として決定されます。

つまり、ある化石が地質年代表のある定まった年代に見出されたと言い、一方では地質の年代はその地層に見出された化石によって決定されるという、地層と化石とが相互に支え合う循環論法によって、地質年代を決定し、そして化石の年代を決定しているのです。「ウマの進化過程に存在した動物」とされた化石についても、同様にしてそれぞれの化石の年代が推定されたのです。
化石全般に関しては、化石化はどのようにして起こるのか、化石化にはどれ位の時間が必要か、どのような化石が現在発見されているか、また年代測定と地層の問題など、改めて項を設けて、もう少し考察したいと思います。


参考文献:「創造」Vol.3, No.4(1999);「生命進化 40億年の風景」(中村 運著/化学同人);「化石の科学」(日本古生物学会編集/朝倉書店);「進化論に疑問あり」(リチャード・ミルトン著/心交社);「進化論の争点」(シルビア・べーカー著/聖書と科学の会)