6-35.主が結ばれた契約

第6章 ノアの洪水

6-35.主が結ばれた契約

神はノアと、彼といっしょにいる息子たちに告げて仰せられた。「さあ、わたしはわたしの契約を立てよう。あなたがたと、そしてあなたがたの後の子孫と。また、あなたがたといっしょにいるすべての生き物と。鳥、家畜、それにあなたがたといっしょにいるすべての野の獣、箱舟から出て来たすべてのもの、地のすべての生き物と。わたしはあなたがたと契約を立てる。すべて肉なるものは、もはや大洪水の水では断ち切られない。もはや大洪水が地を滅ぼすようなことはない。・・・わたしは、わたしとあなたがたとの間、およびすべて肉なる生き物との間の、わたしの契約を思い出すから、大水は、すべての肉なるものを滅ぼす大洪水とは決してならない。(創世記9:8-11, 15)

 「契約」という言葉は旧約聖書には260-270回(翻訳により多少異なる)使われており、その内95%近くにあたる約250回は、神が結ばれた契約に関する事項として書かれています。
原始福音と言われるイエス・キリストによる救いの約束(創3:15)に始まり、箱船による救いの契約(創6:18以下)、そして洪水後、ふたたび大洪水で世界を滅ぼさないという大切な契約を結ばれました。
さらにアブラハムとの契約(創15:4, 5; 18-21; 17:1-8; 15, 16)、イサクとの契約(創26:24, 25)、ヤコブとの契約(創28:13-15)、モーセ及びイスラエルの民との契約(出3:12-14; 6:2-8; 34:10, 27)、ダビデとの契約(Ⅱサムエル7:8-12, 16)などなど、必ず成就する様々な約束を与えられました。
このように、一方的な庇護、祝福である神の契約を見ても、ご自身の作品である人を、主がどのように大切に慈しんでおられるかがよく分かります。その極限の恵みと祝福の新しい契約は、もちろんイエス・キリストの十字架による救いの約束です(ヘブル書8:8-12、ルカ22:19, 20)。

 洪水後に神が契約を結ばれた相手はノアたち八人の人だけではなく、巨大な箱船に入って救いを得たすべての生き物、鳥、家畜、そして野の獣までもが対象であったことには驚きます。
動物との契約の例は、ホセア書に戦いがなく平安で正義と公平が行われるイスラエルの救いの日の契約を、「野の獣、空の鳥および地の這うものと契約を結ぶ」と書かれています(ホセア書2:18-20)。中心に据えられた人を取り巻く動物たちもまた、主の祝福の対象であり、御心に留めておられることを(マタイ 6:26, 10:29, ヨナ書 4:11)このシリーズで何度か申しました 。

 そして、現在の世界の原点となった洪水後の地球の再出発に当たり、人類の先祖である八人の人と、そして動物たちまで含めて大切な契約を結ばれたのです。
このシリーズで何度か言及していますが、動物に対する現代の人々の取り扱いは両極端に走り、一方で動物を虐待する人々がおり、他方では動物を人間と同格に扱う人々、時には人間以上に扱う人々がいますが、いずれも主が教えられた中庸で正しい動物の取り扱いを著しく外れています。
創造の初めから動物にもいのちが与えられ、祝福されましたが、人は動物とは一線を画する存在であり、主の御姿を映した尊いいのちとして造られたのです(創世記1:26-28)。

 叡智の限りを尽くして「お造りになったすべてのものをご覧になり、見よ、それは極めて良かった」(創1:31)と完璧であることを確認なさった作品を、大洪水によって自ら滅ぼさねばならなかった主の沈痛な御心を人間には理解することができないと思っています。
人の内には良いものはないことをご存じの上で、改めて祝福し、そして大水が出ても、それを大洪水にして世界を滅ぼすことは二度と再びしないと約束されました。
「わたしは、ノアの洪水をもう地上に送らないと誓ったが、そのように、あなたを怒らず、あなたを責めないと私は誓う。たとい山々が移り、丘が動いても、わたしの変わらぬ愛はあなたから移らず、わたしの平和の契約は動かない」(イザヤ54:9-10)と、永遠に変わらない愛をもって、この契約を締結してくださったのでした。

 さて、ノアの洪水が局地的なものであったとしたら、この契約の意味はどういうことになるのでしょうか?そもそも、局地的なものであったなら、箱船に入らなかった大勢の人々や陸生動物たちは高い山に登り、或いは遠くへ逃げたでしょうから、死に絶えることはなかったでしょう。
大洪水が全地球を覆い尽くすものであり、すべてが死滅したからこそ、今後は「もはや大洪水の水では断ち切られない。もはや大洪水が地を滅ぼすようなことはない」と動物たちをも含めて契約を結ばれたことが重要な意味を持っているのです。

 それ以後にも、かなり広域の洪水は起こってきたことが歴史に記載されていますし、実は現在、地球が不安定になり、昨年末のスマトラ沖地震と津波による21万人以上に及ぶ大被害を先頭に、水害は世界各地に発生しているのは万人の知るところです。
しかしながら、これら大水害がいかに大きくても、やはり局地的であり、もはや起こさないと言われた「世界を滅ぼす大洪水」ではないのです。
箱船の中でまさに肉体的に救いを得た人とそして動物たちに対して与えられた「二度と再びこれはない」というお約束が重大な意味を持つ所以です。