5-22.完璧な世界

第5章 6日間(144時間)の天地創造

5-22.完璧な世界

「また、地のすべての獣、空のすべての鳥、地をはうすべてのもので、いのちの息のあるもののために、食物として、すべての緑の草を与える。」すると、そのようになった。(創世記1:30)

 「猛獣と一口に言っても、ライオンは空腹の時に狩りをして食べるが、虎は空腹でなくても殺し、狼は狡猾で残忍な動物であり、ハイエナは、豹は、熊は・・・と、それぞれ相当の違いがある。小さな昆虫の世界も拡大して眺めれば、同じ凄まじい殺戮があるのだ。」

 小さな昆虫から大型の猛獣に至るまで、肉食動物の生態は様々に紹介されていますが、各種動物が互いに食べる側であったり、食べられる側であったりして食物連鎖が成立するからこそ、動物の生命が維持されていると説明されています。そして、昨今の科学技術の発達により最高水準の技術を駆使し、動物間の死闘を驚くほど詳細に生々しく撮影した映像が、野生の肉食動物の自然の姿であるとして、テレビで始終放映されています。このように映像の迫力をもって繰り返し教えられている日本人など、いわゆる「先進国」と言われる地域に住む人間は、このような殺戮が行われることこそが「自然」なのだ、これで良いのだと納得しています。昔も今もそして未来も営まれる生き物の姿、地球の姿は、このように残忍で惨めなものとして、人々の心にすっかり定着してしまいました(斉一説、(20)「夕と朝によって刻まれた1日」を参照)。

 ところが、創造主が造られた地球は、様々な点で今の地球と異なっていました。まず、地球全体が磁場とオゾン層と上の水ですっぽりと覆われていたため、現在の厳しい地球環境とは大きく異なっていたでしょう。赤道直下でも耐えられない暑さではなく、北極も南極も氷で覆われてはおらず、砂漠などは存在しなかったのではないでしょうか((20)「夕と朝によって刻まれた1日」及び(22)「上の水」の項参照)。地球全体が穏和な気象条件に守られていて、地球全面に植物が豊かに生い茂っていたと推測される化石が発見されています。

 そして、動物たちの食物として創造主から与えられたのは、緑の草だった、つまり、すべての動物が草食動物として創造されたのです。海に住む鮫のような魚も、陸に住む虎や狼のような猛獣も、自身が生きるために他の生き物のいのちを狙う恐ろしい動物として創造されたのではなかったのです。アダムとエバがエデンの園で主に背くという大きな罪を犯す前は、大地も動物も呪われてはおらず(創世記3:17)、生きるために必要な栄養素はすべて植物から摂取できたのです。しかしながら、罪の結果、人も動物も殺し合うようになりました。創世記6章において、ノアの洪水前の時代は「堕落し、地は暴虐に満ちていた。・・・地上でその道を乱していた」(創世記6:11-12)と書かれており、洪水後、主が肉食を許可された(創世記9:3)ことを考えると、洪水前においてさえ人も動物も一部では、すでに肉食を始めていたのかも知れません。

 私たちが日常、見聞きしている世界は、創造の完成したときの世界とは全く違っているのだということを、常に念頭に置いておく必要があるでしょう。主に背を向けてしまった人類は、キリスト信仰を持っている者でさえ、自分の目に映り、聞こえてくるものに支配され、それを判断基準とし、人間中心で利己的な考えを勝手に主の御旨だと錯覚することから逃れきれない側面があるのではないでしょうか。しかし、血で血を洗う戦争や殺害などはもちろんのこと、人間同士の日常茶飯に起こっている憎しみ、傷つけ合い、いがみ合い、差別、苦しみや、さらに動物に関してさえ苦しみも死も創造主の御旨ではあり得ないと言ったら、反論が出てくるかも知れません。しかし、創造された世界はどんな種類の苦しみも、争いも、憎しみも、死もいっさい存在しない、平和で完璧そのものの世界だったのです。

 叡智の結晶として私たちを創造してくださった主に背いた後でさえ、人間に注がれている創造主の愛の大きさ、深さを思うとき、主の御旨は、「完璧」から始まり、そして、キリストの福音によりそこへ戻っていくこと以外にはあり得ないのだと知るべきでしょう。人間は完璧を理解できないのだということを充分認識しないで現状を考えの出発点にすると、斉一説に足を引きずられ奈落の底に突き落とされ、間違った結論に到達することでしょう。

 来るべき世界は創造された当時を思わせる平和な世界であることが、イザヤ書に明確に書かれています。狼と子羊が一緒に草を食べ、豹と子山羊と乳飲み子とコブラやマムシとが仲良く共に遊び、ライオンが牛のようにわらを食べる世界が描かれているのです(イザヤ11:6~9;65:25)。


参考文献:「創造」vol. 5, No.1 (2001);「創世記の記録」ヘンリー・モリス著、創造科学研究会、挿絵:神谷直子