5-26.主に委ねられた管理

第5章 6日間(144時間)の天地創造

5-26.主に委ねられた管理

そして神は、「われわれに似るように、われわれのかたちに、人を造ろう。そして彼らに、海の魚、空の鳥、家畜、地のすべてのもの、地をはうすべてのものを支配させよう。」と仰せられた。神はまた、彼らを祝福し、このように神は彼らに仰せられた。「生めよ。ふえよ。地を満たせ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地をはうすべての生き物を支配せよ。」(創世記1:26,28 )

 創造主はご自身のみ姿に人をお造りになった後に、この地上の管理を人にお委ねになりました。主が被造物すべてを完璧に管理なさったように、宇宙を、地球を、地上の生き物を、自然環境や自然界の秩序すべてを、主のみ旨に従って管理する栄誉を人は与えられたのです。人が戴いた特性について前項で学びましたが、この任務を遂行するために必要な特性でした。この箇所に続く29節、30節では、「ついで神は仰せられた。『見よ。わたしは、全地の上にあって、種を持つすべての草と、種を持って実を結ぶすべての木をあなたがたに与えた。それがあなたがたの食物となる。地のすべての獣、空のすべての鳥、地をはうすべてのもので、いのちの息のあるもののために、食物として、すべての緑の草を与える。』すると、そのようになった。」と書かれています。これは単に人と動物の食物は緑の植物だと教えておられるだけではなく、どのように管理するべきかという内容の一部であったのでしょう。

 ダビデは、「これにみ手のわざを治めさせ、よろずの物をその足の下におかれました。すべての羊と牛、また野の獣、空の鳥と海の魚、海路を通うものまでも。」(詩篇8:6-8)と歌っています。主から託されたこの任務を遂行するために、管理する対象である自然界、主が定められた自然界の諸法則、そして植物を、動物を、人類のことをまずよく知らなければなりません。そして、様々な自然科学、人文科学、さらには芸術的な開花をするようにと創造主が豊かに祝福を与えられたのだと思われます。科学や芸術の発展は人の優れた能力に依るものだと人間中心主義的視点で捉え、その成果を享受するのは人類の特権だという考え方が残念ながら相当普遍化しています。しかし、もとより人類にそのような権利がある筈はなく、人々が豊かに生きるようにと、創造主が無償で備え、支えてくださった恩恵以外の何物でもありません。


 創造の昔、植物だけを食物として与えられたこと、そしてすべてを正しく管理するようにと委ねられたことを、罪が入ったために人類は忘れ果ててしまいました。人は喜びに満ち溢れて生命を生きて、この地上を管理する任務を与えられたにも拘わらず、不当な怒りに身を任せたカインがアベルを殺した(創世記4:8)ことに始まり、「地上に人の悪が増大し、その心に計ることがみな、いつも悪いことだけに傾く」(創世記6:5)ようになりました。創造主を離れ、「罪の奴隷」、「不法の奴隷となって死に至り」(ローマ6:16-21)、いのちの尊さ、喜びを見失い、愚かさ、怒り、脱力感、無力感にさいなまれる人類になり果てました。

 ノアの洪水によって地球全体が大変革を被り、選ばれた動物と正しい人であるノアの家族8人だけが生き残り(創世記7:21-23)、地球は創造の昔とは比較さえできない悪い条件ではありましたが、言うならば一から再出発、初期化(フォーマット)されました。そして、洪水後も人は失格だとして任務を下ろされることなく、改めて地上の管理責任者として任命されたのでした(創世記9:2)。この任務遂行のために科学を発展させる大きな祝福を受けながら、人はその成果を正しく用いないで失敗しています(ヘブル2:8)。

 この地球上に戦争の無かった時期はありません。第二次大戦後、見かけ上戦争をしていない日本やその他の諸国においても、心は荒廃する一方で人々の争いは絶えず、露骨に弱肉強食の醜い争いの世界となっています。いじめを子供たちだけの問題だと思うのは錯覚で、子供よりは陰惨な姿で先に大人に発生しているのであり、大人の生き様が子供たちに反映しただけではないでしょうか。

 この世の苦しい戦いを勝ち抜くには他の人を蹴落とす以外に道はないと信じ切って、心の闇の赴くところを歩くようになっている人類です。幼児・老人・弱者の虐待や切り捨て、家庭・学校の崩壊、人種差別など様々な差別、自然環境破壊、動物虐待、数え上げればきりがないほど、あらゆる観点から地球は悲鳴を上げています。

創造主を認めず、進化論から派生する尊大な人間中心主義の土台にどっしりと腰を据えて、人類は創造主から与えられた栄誉ある管理者の任務を放棄して、自らも地球全体も奈落の底へと猛進しているようです。


参考文献:「創造」vol. 5, No.2/3 (2001);「創世記の記録」ヘンリー・モリス著、創造科学研究会、挿絵(一部)神谷直子