6-13.あらゆる種類の肉なるもの

第6章 ノアの洪水

6-13.あらゆる種類の肉なるもの

それから七日たって大洪水の大水が地の上に起こった。ちょうどその同じ日に、ノアは、ノアの息子たちセム、ハム、ヤペテ、またノアの妻と息子たちの三人の妻といっしょに箱舟にはいった。彼らといっしょにあらゆる種類の獣、あらゆる種類の家畜、あらゆる種類の地をはうもの、あらゆる種類の鳥、翼のあるすべてのものがみな、はいった。こうして、いのちの息のあるすべての肉なるものが、二匹ずつ箱舟の中のノアのところにはいった。はいったものは、すべての肉なるものの雄と雌であって、神がノアに命じられたとおりであった(創世記7:10,13-16)。

 それから七日経って、主はお約束なさったとおりに地上に大洪水を起こされました。まさにその同じ日に、ノアたち、家族八人は、揃って箱船に入りました。現在に生きる私たちは、地震、洪水など様々な天変地異を自分自身、又は知人の体験として、或いは生々しい映像で知っていますから、地球全体を覆う大洪水を起こすと主がおっしゃったなら、どのようなものかを推測することは可能です。
 しかし、ノアたちは、その日、その時までどのように説明されても、大洪水についてはどんな意味でも理解出来なかったでしょう。そのような状況であったにも拘わらず、主のお言葉は完璧で正確、何一つ違えることはないと信じ切ったノアの生き様が、「ちょうどその同じ日に、・・・いっしょに箱船に入った」というこの記述で窺い知ることが出来ます。
 さて、大洪水によって地球はまさしくひっくり返り、創造された時の地球の姿はもうなくなってしまいます。局地的な洪水によってさえ、火山活動、地震、地滑り、その他の天変地異を誘発し、地表のみならず地球内部までが掻き回された状態になります。ノアの洪水は、私たちが知っている洪水とはスケールが全く違っていたために、洪水の大小という量的な差は質的な差を生みだしたことでしょう。
 そして、箱船に入った八人と動物たち、そして水に住む限られた動物以外は、いのちの息のあるすべての生きものが死に絶えました。創造された完璧な地球とは異なり、ひっくり返った状態になった、数段劣っている新しい地球と、選ばれて箱船に入った生き物だけが生息する新しい地上の様子を思い浮かべることが出来ます。

 全知全能の主が叡智の結晶として創造なさった地球と、その上に住むもの、特に人をこのように壊滅状態にしなければならなかった創造主の御心の痛みは、人間がどんなに判ろうとしても判らないでしょう。このように滅ぼす以外に方法がないところまで堕落してしまった地球を再設定するために、人間についてはノアの家族を選ばれました(提供されていた箱船による救いを、他の人々は自ら拒絶したことをくどいようですが付け加えます)。
 現在、世界中に存在する人類はすべて、ノアとノアの妻から生まれた三人の息子たち、そしてその起源が記されていない三人の妻たちから出ました(創世記9:19)。元々はアダムから出た人類は、ここで主を信じる八人の人々から再出発することになったのです。したがって、例えば皮膚の色を言うなら、白人、黒人、黄色人種など、現在地上に生きているあらゆる人種を生み出す可能性のある遺伝子を、彼らが持っていたのです。

 地球の始まりに当たり、植物も、動物も主は「種類にしたがって」創造なさいました(創世記1:11, 12, 21, 24, 25及び「(32)種類にしたがって」)。大洪水によって地上の生き物を一掃した後に、新しい地球上でいのちを育む生き物として箱船に入る動物の選別方法を、主は繰り返し、詳しく伝えられました。洪水後に各種類のすべての生き物が生き残るために、空の鳥、這うもの、獣、家畜それぞれについて各種類毎に選別し(創世記6:19, 20, 7:2, 3, 14)、一つがいずつ入るもの、七匹ずつ入るものを決定し、箱船による救いの指示を与えられました。
 初めの創造の時と同じように、何度もこのことが記述されています。後の世の人々が不信仰で、様々な流言飛語が飛び交うであろうことを知っておられ、「すべての種類の獣、すべての種類の家畜、すべての種類の這うもの、すべての種類の鳥、すべての種類の翼あるもの、すべてのいのちの息のある、すべての肉なるもの」と、文字通りすべての種類の動物が箱船に入ったことが改めて強調されています。
 そして、ノアたちはすべて主の命令どおりに行い、「おのおのその種類にしたがって、箱舟から出て来ました」(創世記8:19)と、洪水後に関する確認の記述がされています。すべてにおいて完全である創造主は、大洪水後の荒れ果てた全世界を人の住む所として再設定なさる時にも、最高のみわざをなさいました(申命記32:4)。「知恵をもって地の基を定め、英知をもって天を堅く立てられた」(箴言3:19)この美しい地球と、その上に住まわせられた被造物に熱いみ思いを常に注いでおられたのでした。裁きの後にも、最高の再出発を用意して下さいました。