5-11.大気の組成

第5章 6日間(144時間)の天地創造

5-11.大気の組成

ついで神は「大空よ。水の間にあれ。水と水との間に区別があるように。」と仰せられた。こうして神は、大空を造り、大空の下にある水と、大空の上にある水とを区別された。するとそのようになった。神は、その大空を天と名づけられた。こうして夕があり、朝があった。第二日。神が、「地は植物、種を生じる草、種類にしたがって、その中に種のある実を結ぶ果樹を地の上に芽生えさせよ。」と仰せられると、そのようになった。それで、地は植物、おのおのその種類にしたがって種を生じる草、おのおのその種類にしたがって、その中に種のある実を結ぶ木を生じた。神は見て、それをよしとされた。こうして夕があり、朝があった。第三日。(創世記1:6-8、1:11-13)

 地球を囲む大気が一気に生じ(創1:6-8)、安定した大気を持つことが出来たのは、地球が充分な質量を持っていて、大気を捉えておくだけの重力を持っていたためです。「もし、地球の直径が12,800kmでなく11,500kmだったなら、大気圏の減少によって地球全体が雪や氷の荒野と化していただろう」とカリフォルニア大学のD・ギッシュ博士が述べています。地球が10%小さくなるだけで、この地球上に生命は生息出来なくなるというのです。地球の大きさや質量だけを考えても、創造者の底知れない偉大な叡智とご計画が伺われます。「あなたは知っているか。だれがその大きさを定め、だれが測りなわをその上に張ったかを」(ヨブ38:5)

現在大気中には、化合物になっていない気体の酸素が約21%含まれていて、酸素呼吸をする生物を支えています。この遊離状態の酸素は、いつ、どのようにして大気中に存在するようになったのでしょう。多くの科学者たちは、酸素は原始大気には含まれておらず、地球上に植物が出現し光合成を行うようになって、初めて多量に生じたと考えているようです。

現在の大気は、窒素(78%、赤)と酸素(21%、緑)で99%を占め、それ以外はアルゴン0.93%、二酸化炭素0.03%、ごく微量の水蒸気、ネオン、水素などの組成から成っています(円グラフ)。この組成比率は、重要な意味を持っています。まず、生物に無害な窒素やアルゴンのような気体が、相当高濃度に大気中に含まれている必要があります。酸素は動物の生存に一定濃度必要ですが、多すぎても生命反応に危険が及ぶことは、よく知られています。植物が大気中の炭酸ガスを使って光合成により有機エネルギーを生み出し、人間を始め動物が豊かに生きるために、このように絶妙な組成比を持つ大気圏が初めからこの地球に準備されたのです。


もし、酸素分圧ゼロから出発して植物が酸素を供給したのなら、もし最初の大気組成が今日と大きく異なっていたら、酸素が必要な濃度にまで高まる前に、動物は血液・心臓・肺など主要臓器においてガス分圧の異常を起こし、生きることは出来なかったはずです。植物でさえ、酸素を吸収し、炭酸ガスを排出する呼吸もしているのです(図)。狭い空間の閉鎖系では、初めに酸素がなかったとしても、光合成を行う限りにおいて呼吸に支障は生じないかもしれません。しかし、生じた酸素が大気中に発散する解放系において無酸素の状態で始まれば、植物の呼吸を支えるだけの酸素濃度が確保出来たかどうか疑問に思われます。

水中に生きる動物は、水に溶けている酸素を呼吸しますが、酸素濃度の上昇は大気中と水中との間に相当の時差があったでしょう。海水に対する酸素の溶解度からすると、大気中の酸素分圧は約0.02気圧以上必要であると計算されてもいます。光合成を行う海生植物は存在しますが、大気にも水中にも酸素が存在しない状態で生命が仮に始まったとしても、生き続けることは陸でも海でも不可能だったでしょう。酸素、窒素、二酸化炭素など各気体の分圧が整えられた状態でこそ、生命は無事に維持され続けるのです。

初めに、上の水と大気と陸と海とを造り、そして植物を繁茂させて、動物を、そして人間を創造された主は、すべてを完璧な状態に創造されたのですから、生命を維持するために大気中の酸素も含めすべての気体を最善の比率に整えて造られたと考えられます。だからこそ、第三日の終わりに、よしと判定されたのです。


「創世記の記録」ヘンリー・モリス著、創造科学研究会(1992)、「創造」vol. 3, 4 (1999)、「科学の説明が聖書に近づいた」久保有政著、レムナント出版、「地球と生命の起源」酒井 均著、講談社