5-9.エネルギーの形

第5章 6日間(144時間)の天地創造

5-9.エネルギーの形

神が、「地は植物、種を生じる草、種類にしたがって、その中に種のある実を結ぶ果樹を地の上に芽生えさせよ。」と仰せられると、そのようになった。それで、地は植物、おのおのその種類にしたがって種を生じる草、おのおのその種類にしたがって、その中に種のある実を結ぶ木を生じた。神は見て、それをよしとされた。こうして夕があり、朝があった。第三日。(創世記11-1:13)

温暖で適切な湿度を持った大気に包まれた地球に、静かな水の循環と肥沃な大地を整えた後、創造主は地上に生命体を置くために食糧を備えられました。無機物である炭酸ガスと水から酸素とブドウ糖を合成する、つまり光のエネルギーをブドウ糖という有機エネルギーの形に変換するメカニズムを持った植物を創造されたのです。

さて、「植物は生命体ではないのか」という疑問を持たれる方も多いかも知れません。草や果樹など植物は、タンパク質や脂質などからできている細胞が構成単位となっていること、そしてDNAを通して伝達される情報にしたがって再生産することができるなど、物質的に、また生物学的には生命体です。
しかし、聖書の定義で「生きている」とは、血と肉を持ち、いのちの息を与えられたものを指します。植物は「生きているもの」の中には含まれず、いのちの息のあるものの食物として備えられたのです。「地のすべての獣、空のすべての鳥、地をはうすべてのもので、いのちの息のあるもののために、食物として、すべての緑の草を与える。」(創世記1:30)

創造主が昆虫や魚なども含めた動物全体をこの地上に置かれる前に、食糧としてなぜ植物を準備なさったのでしょうか?動物は生命を支えるために、食物として有機エネルギーを外から摂取しなければなりません。全く動かないで呼吸をしているだけでも、心臓を始め各臓器が働くために大きなエネルギーを消費し(基礎代謝)、また体を構築する脂肪、タンパク質は絶えず分解と合成を繰り返して、代謝回転しているのです。「霞を食って生きていけない」と表現されているように、動物はこれらの活動のための材料、エネルギーを植物や他の動物の形になった有機物を食物として摂取しなければなりません。
摂取した食物の栄養効率は動物の種類により、状況により異なりますが、成長段階でさえ摂取したカロリーの約10%しか自己の血や肉として再構築出来ない動物もあり、多くのエネルギーをただ一方的に消費しているのです。人類はそのエネルギー源を様々な種類の動植物から得ていて、その食物連鎖があたかも動物だけでも成立可能であるかのごとき錯覚に陥っている方々もいるかも知れません。しかし、動物が使える有機エネルギーを提供しているのは生産者である植物であり、動物はエネルギー的には消費者であり、完全に植物に依存しているのです。
もし地上に植物がなかったら、全種類の動物は飢餓のため絶滅する以外に道はありません。

では、植物は何を材料にして、又どのようにして、動物に利用可能な有機エネルギーを調達しているのでしょう?植物は無機物を有機物に変えるために、「光合成」という特別なメカニズムを持っているのです。図に示したように、葉緑素が葉緑体という特別な構造に組み込まれて光のエネルギーを受け取り、水は酸素ガスと還元力とに分解され、また光のエネルギーは特別な有機エネルギー(ATP)へ変換されます。還元力と炭酸ガスは、この有機エネルギーによって有機化合物であるブドウ糖へと合成されます。

無機物である水と炭酸ガスから光エネルギーによって有機化合物を合成する機能を与えられたのは、葉緑体という特別な細胞内小器官を持っている植物だけです。有機エネルギー及び生体を構築する化合物の入り口であるブドウ糖の合成は、百パーセント植物に依存していますが、一度ブドウ糖が与えられると、それぞれの動植物に独自の体内の代謝回転経路に組み込まれ、ブドウ糖から澱粉やグリコーゲンへ、アミノ酸やタンパク質へ、又脂質へと自由に合成されて、生命活動が円滑に維持されるのです。
植物が第三日に創造された意味や、果たしている役割について、次回更にお話しを進めたいと思います。


「創世記の記録」ヘンリー・モリス著、創造科学研究会(1992)、「創造」vol 3, 4 (1999)