5-16.いのちの血液

第5章 6日間(144時間)の天地創造

5-16.いのちの血液

なぜなら、肉のいのちは血の中にあるからである。わたしはあなたがたのいのちを祭壇の上で贖うために、これをあなたがたに与えた。いのちとして贖いをするのは血である(レビ記17:11)。

 いわば「動く臓器」である血液の働きについて、細胞成分の運搬作用及び保護作用を前回簡単に説明しました。血液から赤血球など顆粒成分を除いた血漿には、重要な各種タンパク質が高濃度に溶け込んでいます。免疫グロブリンは図に示したようにY字型の特別な構造を持っており、紫色の部分は細胞に結合する部位、青色の部分は抗原である異物に対応する特異的な構造をしており、その抗原とだけ結合します。この抗体は抗原(いびつな半円)の赤い構造部分と適合して結合し、次の反応へと進行して、免疫反応が起こります。緑の構造を持つ抗原はこのグロブリンとは結合せず、緑の構造に適合する別のグロブリンが生合成されます。

 血漿中タンパク質の60%近くを占めるアルブミン(図の赤い漫画動物)は非常によく溶けるタンパク質で、各種塩類と共に高濃度に溶け込むことによって、他のタンパク質やその他水に溶けにくい物質を溶けやすくする、すなわち良質の溶媒にするという役割を果たしています。さらにアルブミンは、酸素や炭酸ガス以外の様々な物質、脂肪酸、ホルモン、各種代謝産物、薬物などを「背中に背負って」運搬する役割を担っています(ニコニコと運ばれている青い丸)。アルブミンによって運搬されたものは、それぞれの目的部位に到達すると、アルブミンから遊離してそこで働くのです。

 生体にとって水は極度に減少すると死につながる重要な成分ですが(参照(12)血液と海水の無機成分濃度)、血漿アルブミンが大きく関与している調節作用によって、生体内の水分量は適正に維持されています。また体温は人では低くても35℃前後まで、高温では40℃になると生命が脅かされます。酸性度(pH)は中性に(胃だけが例外)、また浸透圧も極めて狭い範囲内で一定に保たれる必要があるのですが、これら調節作用も、塩類やアルブミンなどが溶け込み全身を循環している血液が担っています。

 昨今、洗剤中にも酵素が入れられるなど、酵素という言葉がある意味で本質をずれた所で馴染み深いものになっていますが、酵素は生命反応の中核を担っている重要な生体成分の一つなのです。そして、血漿は酵素の宝庫であり、様々な酵素が血漿に溶け込んでいて重要な働きをしていると共に、血液が全身を駆けめぐって酵素を受け取り、配る役割をしています。
 
 臓器として認識されることの少ない血液が、簡単に語れないほど緻密で無駄のない企画の下に造り上げられており、驚くほどの重大な役割を果たして、まさにいのちの中枢に位置しているということが、生々しく聖書に語られていることを学びたいと思います。
引用したこのレビ記の記載は、創造主がどのように血液を位置づけて動物に与えられたかを如実に物語っています。動物の死、血を流すことは創造の時点ではありませんでした。アダムとエバが創造主に背いた結果として死が入り、そして創造主が彼らのために動物の血を流して皮を取り衣を作られた時に、最初の血が流されたのでした。アダムとエバの背きの罪を償うためには、血を流す必要があったのです。これは、人の罪の代償には血が流されなければならないことを象徴したことでした。

 旧約聖書を読むと、人間の罪を贖うために多くの動物の血が流される記載が数多く出てきます。ぼんやり読んでいてさえ、気持ち悪い、おぞましい気持ちがしないでしょうか?このおぞましさは、まさに人間ひとりひとりのおぞましさなのだと気が付き、心の底から納得するには相当の期間が必要かも知れません。これら想像を絶するおびただしい動物の血液が流された最後に、イエス・キリストの十字架上の流血と死があったのです。

 神の子である罪のないイエス様の血が流されたことにより、罪の贖いのために動物の血を流す必要がもはや無くなりました。ですから、創造主がこのように血液を与えられたのは、簡単に説明した血液の生物的機能だけではなく、人を罪から贖うという霊的な目的を持つものであったのです。


参考文献:「創造」vol. 4, No.2 (2000);最新医学大辞典、医歯薬出版(1996)、臨床検査講座7、「生化学」阿南功一・阿部喜代司著(1995)