6-19.世界各地の大洪水伝説

第6章 ノアの洪水

6-19.世界各地の大洪水伝説

天は古い昔からあり、地は神のことばによって水から出て、水によって成ったのであって、当時の世界は、その水により、洪水におおわれて滅びました(Ⅱペテロ3:5, 6)。

 聖書に記録された大洪水で生き残ったノアたち8人の家族から増え広がった諸民族は、その数百年後、バベルの塔を建てようとしたために主によって言語を混乱させられて、世界各地に離散してしまいました。
その結果、「ノアの大洪水」の話は人類共通の記憶として、世界各地において世代を通じて語り継がれて行ったと思われます。ノア及びその子孫は聖書にあるように、大洪水の記録を文字をもって忠実に後世に残しました。

 一方、世界各地に於いては、一般には「口伝」により洪水伝説として人々に伝えられていったのでしょう。
大抵の人が「伝言ゲーム」を一度は経験したことがあるでしょうが、簡単なことでも口伝えが如何に正確に伝わりにくく、変化しやすいかはよく知られていることです。
したがって口伝として語り継がれた洪水伝説も、内容の細部が相当変化していたり、時には多神教に変質したりさえしていても不思議はありません。
にもかかわらず、世界中至る所に数多く伝わっている洪水伝説は、「世界はかつて一度、大洪水によって滅ぼされた」という大筋に於いて共通しています。

 これら伝説のうちの幾つかをここにご紹介しましょう。
ギリシャ人の伝説では、「『悪が極まったので、地に大洪水を起こす』という神々の警告を受けたデューカリオンは、箱船を作った。船はパルナソス山上に留まりました」。
インド人の伝説では、「警告によってマヌーは船を作り、全被造物を滅ぼした洪水から逃れました」。
イギリスのドルイド教の伝説では、「至高の存在者は、悪に染まった人間たちを滅ぼすために大洪水を送り、一族長が大きな船に乗って助かり、人類が再建されました」。
中国人の伝説では、「人間が天に背いたために洪水が起こされた時、中国文化の創設者ファ・ヘは、妻と三人の息子と三人の娘と共に洪水から逃れました」。
中国のミャオ族(苗族)の大洪水伝説では、「全世界を覆う大洪水が来た時、太祖ヌア(ノア)は家族全員と共に巨大な船を作り、助かりました」。
この伝説ではヌアとその妻との間の三人の息子の名前もそっくりなほど、細部に亘って聖書の大洪水の記事と似ています。
また、バビロニア(メソポタミア)の大洪水伝説では、「ある王が神々から船を作るように命じられ、親族や友人そして動物たちと共に乗り込み、世界を滅ぼす大洪水から救われました」。
その他にも、エジプト人、ポリネシア人、メキシコ人、ペルー人、アメリカ・インディアン、グリーンランドの伝説など、世界各国に大洪水伝説があります。
また、アッシリア人、ペルシャ人、フルギヤ人、フィジー人、エスキモー、原始アフリカ人、ブラジル人、その他多くの様々な種族、セム語族、アーリア語族、ウラル・アルタイ語族など、世界中至る所に、「一家族を除いて全人類が大洪水によって滅ぼされた」という大洪水伝説が伝えられています。

 このようにして世界に伝わった200以上の洪水伝説を分析した結果(アメリカICR博物館の展示、季刊誌「創造」1997、秋号(創造科学研究会))を表に転載します。
これら200以上の洪水伝説の実に95%が全世界を覆う洪水であったとしているのは、口伝であることを考えるとこの一致はむしろ驚きでしょう。
そして、神の目にかなった家族があったこと、船に救われた家族と動物がいたこと、そして人の罪故の洪水であったことなど、重要な点がよく一致していることは一目瞭然です。
このことより、これら伝説は同じ出来事から発していること、すなわち実際に大洪水が過去の全人類を襲った歴史的出来事であり、それが人類共通の記憶として留まったと考えるのが論理的でしょう。
次回、ニネベの町で発見された図書館の中にあった洪水を描いた叙事詩、有名なギルガメシュ叙事詩について学びたいと思います。


参考書:ヘンリー・モリス著、宇佐神正海訳「創世記の記録」(創造科学研究会)、久保有政著、「創造論の世界」(徳間書店)