6-25.荒涼とした地球

第6章 ノアの洪水

6-25.荒涼とした地球

それからなお、七日待って、彼は鳩を放った。鳩はもう彼のところに戻って来なかった。ノアの生涯の第六百一年の第一の月の一日になって、水は地上からかわき始めた。ノアが、箱舟のおおいを取り去って、ながめると、見よ、地の面は、かわいていた。第二の月の二十七日、地はかわききった(創世記8:12, 13)。

 大小織り交ぜて、世界のどこかで毎年水害が発生しています。昔は自分の居住地近くに発生したことでないと実態を想像さえ出来ませんでしたが、今は発生と同時に生々しい映像が世界に向けて発信されています。折しも2004年7月現在、新潟と福井で大水害が発生しました。
濁流の爆発的エネルギーの凄まじさを、ニュース映像で見られた方も多いでしょう。地球上のごく小さな島でしかない日本の片隅で起こった、水の深さが僅か数メートルにも達しない局地的な洪水でした。ノアの洪水を念頭に置いて数字で表現すると微々たるものになってしまうこの洪水でさえ、実は惨憺たる被害をもたらしたのです。
「当時の世界は、その水により、洪水におおわれて滅び」「火に焼かれるためにとっておかれた」「今の天と地」(Ⅱペテロ3:6, 7)とペテロが書いたこの新しい地球は、ノアたちが知っていた地球とは全く別のもので、激しい拒絶の様相を露骨に見せた地球だったでしょう。洪水後の地球に起こった自然環境の変化を、簡単にまとめてみましょう。

 最初に、時間経過と共に和らぎ、或いは整理されていっただろう地上の状態を見てみます。道や家などはもちろん、林や森や草原はすべて消え失せていました。
緑のない山々が新たに出現し、泥が汚くこびりついて乾いた地面に植物がまばらに芽を出したりしていたかもしれませんが、全般的には死の大地そのものだったでしょう。そして、根こそぎなぎ倒され、或いは幹が引き裂かれて濁流に流されて来た樹木が、泥の堆積物に重なって転がっていたことでしょう。
家畜や野の獣、恐竜、そして人間も・・今私たちが想像する密度ではないでしょうが、むごたらしい死骸となって汚らしく散乱し、悪臭も漂っていたでしょう。表面に散乱していたのは一部で、ほとんどは洪水後に堆積した地中深く埋まっていたことでしょう。その一部が化石となって今私たちの目に触れていると考えられます(このことは後に学びましょう)。現在の洪水で必ず見られる生活のゴミは、人口密度や生活様式から考えて比較的少なかったと想像されます。

さて、洪水後、様々な変化を伴いつつ長期的に地上に残った変化や、恒久的・不可逆的に起こった変化を見てみましょう。

①山が高くなり、海溝は深くなり(詩篇104:8)、上からの水と深淵からの水が集められ、広大で深い海洋が出来ました。

②人々が居住できる陸地が小さくなりました。陸地であっても高くなった山岳地帯は、相当広範囲に人の住めない所になりました。

③洪水前の地球は、大気(窒素、酸素その他の混合気体)、オゾン層と上の水(水蒸気)からなる「気体の衣」に、すっぽりと最適な状態に包まれていました。生命を護る穏和な地球として整えられ、保護されて、豊かな実りと生活環境が保障されていました。それが洪水により大きく破壊されました。

④その結果、地上に大きな温度差が生じ、植物、動物も生育しにくくなり、地上に大きな地域差が生じました。

⑤そして北極圏、南極圏が出来て、人だけではなく、生物がほとんど住めない地域が生じました。

⑥「気体の衣」が質的に変わり、又薄くなったので、宇宙からの有害な放射線、紫外線などが地上に降り注ぐようになり、人、動物そして植物の生活環境が悪化する大きな要因の一つとなりました。

⑦結果として寿命が徐々に短くなりました(後に学びます)。人の寿命に関する記録しかありませんが、動物にも同じことが起こったと考えるべきでしょう。

⑧地表のすぐ下に埋まった種子や木の切り株から芽が出て、植物は生命活動を開始しましたが、いち早く若芽をつけたオリーブのような強い植物はともかくとして、弱い植物が再び確かな生命活動を回復するには何十年という時間が必要だったでしょう。したがって、地表の植物は少なく、小さく、弱々しかったでしょうから、はげ地、はげ山に近い状態が長期間残されたでしょう。また、人も動物も、まさに重労働をしなければ、食べ物を得られない地球に変わり果てたでしょう。

⑨地上に水を噴き出した結果、地下の大洞窟は崩壊しました。濁流は凄まじいエネルギーを発揮して崩壊に拍車をかけ、地をさらに深くえぐりました。地殻は不安定になり、地形は変形しました。その結果、世界中で、何世紀にもわたり火山噴火や地震が頻々と起こるようになり、今に至っても途絶えていません。噴火の結果として美しい火山が形成されているために、火山活動はあたかも地球の初めからあったかのごとく信じている人々が少なくありません。創世の状況を描いた絵本にもしばしば噴火中の火山が描かれています。しかし、噴火がもたらす大災害を思うとき、最初からあったとは考えにくいでしょう。地殻の不安定化に伴って、火山活動が始まったと考えた方が理にかなうでしょう。

⑩生命の営みがそれまでとは比較にならないほど厳しくなり、主はやむを得ず肉食を許可され(9:3, 4)、時間と共に弱肉強食が定着しました。

創造されたときの美しく完璧な地球は滅び、荒涼とした地球がノアたちの眼前に出現し、その後に起こった三百五十年の変化をノア自身がつぶさに見たのです。


参考文献:「創世記の記録」ヘンリー・モリス著、宇佐神正海訳(創造科学研究会)