6-26.妻と息子と息子の妻と

第6章 ノアの洪水

6-26.妻と息子と息子の妻と

第二の月の二十七日、地はかわききった。そこで、神はノアに告げて仰せられた。「あなたは、あなたの妻と、あなたの息子たちと、息子たちの妻といっしょに箱舟から出なさい。あなたといっしょにいるすべての肉なるものの生き物、すなわち鳥や家畜や地をはうすべてのものを、あなたといっしょに連れ出しなさい。それらが地に群がり、地の上で生み、そしてふえるようにしなさい。」(創世記8:14-19)

 ノアは主の命じられたとおりに箱船を造り、主の指示に従って動物たちを箱船に入れ、自分たちも入りました。
そしてノアたちを無事に守るために、主ご自身が箱船の扉を閉ざされました(創世記6:14-7:16)。
「主は、ご自身の民に力をお与えになる。主は、平安をもって、ご自身の民を祝福され」(詩篇29:11)、鉄壁の護りをお与えになったので1年有余の箱船生活は平穏無事に過ぎていきました。そしてノアは、主が共にいて護っていてくださることを承知していました。
二十一世紀に生きている私たちも同様に、主の護りの中に置かれており、そのことをしっかりと認識しているならば、いかなることがあろうとも平安の中に喜んで生きることが出来るのです。

 水が引いた後、烏をそして鳩をノアが偵察に出したのも、当然主の導きによって行ったことは言うまでもないでしょう。その他の諸々の導きがどのような形で行われたかは書かれていませんが、船から外へ出るという大切な導きに関しては、「妻と息子と息子の妻」と言って、箱船の中に入った8人の人々を具体的に名指しされました。
1年と17日前には、主は「あなたとあなたの全家族とは、箱船に入りなさい」(創7:1)と言われました。「あなたの全家族」とは、一体誰々を指して言われたのでしょうか?
主の洪水預言・箱船建造預言を聞いた人々や箱船建造に携わった人々、当時生きていたであろう人々について、「人の寿命は百二十年に定められたのか?」で少し考えました。
この預言があった時点では、ノアの祖父メトシェラも父レメクも健在でしたし、信仰の人であったことが読み取れますから、その時家長であったメトシェラが預言を受けたのでしょう。
レメクやノアも一緒に受けたのかも知れませんが、とにかく箱船建造は彼らが一緒に行い、完成前にメトシェラは死に、洪水の年にレメクも死んだのでしょう。ノアの母とその親族、レメクやノアの兄弟姉妹、ノアの他の子供たちや孫たちなど親族、そしてこれらノアの家族の友人・知人等々、寿命の長かった当時、表面に出ていない人々の中で箱船建造に加わった人々が相当数いたと考えられます。

 その中には、メトシェラやレメク同様、船に入る信仰を持って建造に参画しながら、寿命が尽きた人々もいたでしょう。あるいは、中途半端な気持ちで箱船建造に関わり、何らかの理由で箱船に入らず、救いの恵みを受け損なった人々もいたでしょう。
つまり「全家族」は、このような人々すべてを含めておっしゃった言葉であり、その数が一人でも多いことを主は望んでおられたことでしょう。箱船に入ることと、洪水から救われた後、箱船から出ることに関する指示は、新約聖書の救いの招きと宣教命令に対応するとモリス博士は述べておられます(「創世記の記録」)。
すなわち、「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあながたを休ませてあげます」(マタイ11:28)とイエス様が招かれました。
そして弟子たちには「全世界に出て行き、すべての造られた者に、福音を宣べ伝えなさい」(マルコ16:15)と大宣教命令を出されています。

 洪水前の昔には遙か及ばない、生命を拒絶しているかのごとき荒れ果てた地球であっても(「荒涼とした地球」を参照)、陸の動物が一応安全に住むことが出来るようになった地上に、ノアたちと共に動物たちも出てきました。「すべての獣、這うもの、鳥、地の上を動くものは、おのおのその種類にしたがって、地に群がり、生み、増えるように」と改めて祝福して、放たれました。いのちが育まれる地球として、すべてが再出発したのです。動物たちも、そして人もアララテの山の上から新しく地球全土に徐々に散っていきました。

 地球は全く異なった地球になりました。洪水前にどのような動物がどのように分布して生息していたか分かりませんが、箱船の外にいた地上の動物は例外なく絶滅しましたから、洪水後この地球上に増え始めた陸の動物、空の動物はすべて箱船から出てきた動物たちの子孫であることだけは確かです。水に住む動物は、洪水で絶滅しなかった動物の子孫です。
そして、人に関しても、現在のすべての民族は、ノアの家族8人の子孫(創9:19)です。洪水後の地球の大変化について、また地上に生きる生物が洪水後に被ることになった様々な影響の結果起こった変化については、又後に考えたいと思います。