6-23.オリーブの若葉

第6章 ノアの洪水

6-23.オリーブの若葉

そして、水は、しだいに地から引いていった。水は百五十日の終わりに減り始め、箱船は、第七の月の十七日に、アララテ山の上にとどまった。水は第十の月まで、ますます減り続け、第十の月の一日に、山々の頂が現れた。四十日の終わりになって、ノアは、自分の造った箱舟の窓を開き、烏を放った。するとそれは、水が地からかわききるまで、出たり、戻ったりしていた。また、彼は水が地の面から引いたかどうかを見るために、鳩を彼のもとから放った。鳩は、その足を休める場所が見あたらなかったので、箱舟の彼のもとに帰って来た。水が全地の面にあったからである。彼は手を差し伸べて鳩を捕え、箱舟の自分のところに入れた。それからなお七日待って、再び鳩を箱舟から放った。鳩は夕方になって、彼のもとに帰って来た。すると見よ。むしり取ったばかりのオリーブの若葉がそのくちばしにあるではないか。それで、ノアは水が地から引いたのを知った(創世記8:3-11)。

 詩篇104:8に歌われているように「山は上がり、谷は沈み」、それまでは低いなだらかな山しかなかった地上に、突如として高い山々が聳えることになりました。
真っ先に水面上に頂を見せたアララテ山の上に、箱船は止まりました。アララテ山が地球上のどこにあったかについて、実は確定していません。
イラク、セイロン島、インドその他の地域にある山々である可能性も示唆されています。しかし、現在のトルコの東端、アルメニア国境に近いアルメニア山脈の一部である標高約5,156メートルのアララテ山が、箱船が漂着した山である可能性がもっとも高いと考えられています。

 十九世紀には、探検家や旅行者などかなり多くの人々がこの地方で箱船を目撃したと報告しており、古代や中世にもそのようなことがあったそうです。
洪水後に箱船が着地した所を確定できる証拠を見つけ出そうと現在も努力は続けられていますが、成功していません。人類が月に行き、人工衛星が地球の周囲を回っているという時代に、今もって箱船の着地場所が不明であることに不思議な気がするのは私だけでしょうか?

 この地方全体は後に、アララテとして知られるようになりました(エレミヤ51:27、Ⅱ列王19:37、イザヤ37:38)。
箱船はアララテ山脈の中の一つの山の上に着地したとだけ聖書は述べていますが、聖書の記述のように群を抜いて高い山は、この地方ではアララテ山を除いて他にはありません。
他の山々の頂が現れたのは、箱船がアララテ山に着地してから二ヶ月半も経ってからでしたから、アララテ山が他の山々を凌いで、いかに高かったかが分かります。
近隣諸国の山々よりも約4,000メートルも高くそびえ立っており、又深い水の下で形成された密度の高い溶岩がこの地方にはたくさんあり、また、海生生物の化石を含んだ堆積岩の層があります。ちなみに聖書に挙げられた他の有名な山の高さは、ヘルモン山は2,800メートル、シナイ山は2,100メートルです。また、かのオリーブ山は山というより丘かもしれませんが810メートルです。

 さて、箱船が漂流をやめて山上にとどまり、低い山々の頂が顔を覗かせました。ノアは窓を開いて、まず烏を偵察に出しました。烏は出たり戻ったりしていたので、外は烏でさえまだ落ち着けない状態であったことを知ることが出来ました。
その後、鳩を放って地上の世界をさらに窺い知ろうとしました。鳩は一度目はすぐに戻ってきましたが、それから七日後二度目に放つと、夕方になってオリーブの若葉をくちばしにくわえて戻ってきました。


それは洪水が始まってから278日目、アララテ山上に箱船が着地してから実に128日目、そして少し低い山々の頂が見えてからでも54日後の出来事でした。

 オリーブの木の折れた枝から若枝が出たのでしょうか、あるいは種から芽生えた若木が生長し始めたのでしょうか。鳩がオリーブの若葉をくわえて戻ってきたことについて、「すると見よ」と感激を込めて書かれており、そのことから「水が引いたのを知った」と若葉をくわえてきたことの持つ大きな意味を、ノアが悟ったことにも触れられています。
大洪水によって死んだと思われた地球が、とにかくもう一度いのちあるものを支えることが出来るところまで、再生の活動が始まったということでした。地上に植物が育つようになったということは、大地が生き返ったということなのです。そして、植物が復活したということは、地上で動物のいのちを支えることが出来るようになったということでした。
なぜなら、植物が育たなければ、必然的に動物は生きていけないからです。(六日間(144時間)の天地創造のシリーズ:エネルギーの形植物と動物の共生関係を参照)。創造の第三日に大地に植物を置かれた主は、その後に太陽系を造り、そして動物を創造し、食べ物として植物を与えられました(創世記1:29, 30)。

 すべてを破壊し尽くした後の地球史、そして人類史の再出発であり、出来事の順序はあたかも創造の最初に似てはいますが、似て非なる世界がノアたちの前に広がっていたことは明らかであり、今後それを見ていきたいと思います。


参考文献:「創世記の記録」ヘンリー・モリス著、創造科学研究会